ワキガ特集反転

【コラム】~腋臭症(わきが)特集②~

ワキガ特集反転

腋臭症(わきが)治療の選択肢


●ベストな治療選択を

腋臭症(わきが)特集①ではワキガとは何かに焦点を当ててご紹介しました。
特集②ではワキガ治療の様々な選択肢をご紹介したいと思います。

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腋臭症は厚生労働省に病気として認められているため、医者の診断で「腋臭症(えきしゅうしょう)」と判断されると保険による治療が可能となります。

また、それとは別に「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」(脇の多汗症)と診断されると保険が適用される治療法もあります。

料金面やかかる日数、症状の重さや体質、状況、保険の適用、適用外を含めて、最良の選択は個人が何を求めるかによって異なってきます。特に外科的治療を行う場合は、傷跡が残るものもあります。治療の検討の際には、自分自身でも主体的に情報を集め、病院でしっかりと納得がいくまで説明を受けましょう。

●腋臭症の治療の大枠

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ワキガの治療には様々な選択肢があります。
ざっくりと分けると、塗り薬や注射等を用いる”非外科的治療方法(メスを使わない治療法)”と、汗腺を取り除いてしまう”外科的治療方法(メスを使う治療法)”の2つに大別されます。(この手術は多汗症のETS手術(神経を切る手術)とはまた異なります)

また、ワキガの症状がある方は、同時に原発性腋窩多汗症(脇の多汗症)の方も多いため、腋臭症だけではなく、原発性腋窩多汗症に保険が適用されるかどうかも含めてご紹介いたします。
※保険が適用されるどうかは、症状の重さや状況、医師の指針や判断によって異なります。                

●腋臭症の治療方法の選択肢
※内容は2023年1月時点のものです

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【非外科的治療(メスを使わない治療法)】

メスを使わない治療方法は、身体的な負担が少なく、比較的お手軽にできる点が魅力的です。一方、塗り薬や飲み薬は継続的に使用する必要があります。ミラドライなど、マイクロ波等で切らずに汗腺を破壊をし、永続的な効果が期待できると言われているものもありますが、保険が適用されず、高額になりがちです。

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・塩化アルミニウム液(塗り薬)
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保険:適用外
特徴:多汗症といえば一番メジャーな薬かもしれません。塩化アルミニウムには水分と反応して汗腺に栓をする働きがあり、使用を継続すれば汗の分泌を防ぐ効果が期待できます。殺菌効果もあり、わきがにも効果が期待できます。
副作用としてかゆみが出る場合があります。塩化アルミニウムの濃度を下げたり、部分的に塗布する等して調整していけますが、どうしても皮膚に合わない場合もあるようです。
薬局でも塩化アルミニウム成分を含んだ市販品が買えるという利点があります。
また、長期間使用すると汗腺自体を変化させるという研究結果もありますが、汗腺の構造は変わらなかったという研究結果もあります。


・エクロックゲル(塗り薬)
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保険:〇原発性腋窩多汗症に保険適用
特徴:日本初の保険適用の原発性腋窩多汗症外用剤です。スティックタイプの塗り薬で1日1回両脇にゲルを塗布します。ソフピロニウム臭化物が汗を分泌する「エクリン腺」に作用し、発汗を抑制します。塗るタイプの抗コリン剤です。服用タイプの抗コリン薬と違い、全身性の副作用は少ないと考えられます。

エクロックゲル5%医療関係者向け情報サイト

・ラピフォートⓇワイプ(塗り薬)
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保険:〇原発性腋窩多汗症に保険適用
特徴:2022年5月23日に発売されました。1回使い捨てのワイプが個包装で入っており、簡単で衛生的に使用することができます。。有効成分はグリコピロニウムトシル酸塩水和物です。塗るタイプの抗コリン剤です。

ラピフォートワイプ | マルホ 医療関係者向けサイト

・パースピレックス(塗り薬)
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保険:適用外
特徴:デンマーク Riemann社製で、特許取得されている薬剤です。主成分は塩化アルミニウムで、エタノールと乳酸成分を含んでいます。塩化アルミニウムは、汗に含まれる水分と反応し、汗腺に栓を形成します。エタノールは、角栓を深部まで運び、長期間にわたり効果を持続させます。乳酸成分は 緩衝剤として酸を乳酸に変え、 皮膚のかぶれリスクを軽減します。速乾性で落ちにくい点もポイントです。
夜、寝る前に一回塗ると就寝中に薬が作用し、そのまま日中にも効果が続くため塗り直しの必要がありません。 他の制汗剤やデオドラント製品とは異なり、パースピレックスは1回の使用で長時間効果が持続するのが特徴です。

パースピレックス公式サイト

・プロバンサイン抗コリン薬(飲み薬))

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保険:〇原発性腋窩多汗症に保険適用
特徴:多汗症の治療には「抗コリン薬」と呼ばれるものがよく使用されます。抗コリン薬は、アセチルコリン(神経細胞間の情報伝達を担う物質)の働きをおさえて発汗を抑制します。抗コリン薬にも様々な種類がありますが、保険が適応されるのは臭化プロバンテリン(プロバンサイン)です。効果は人によって異なり、口の渇きや眠気などの副作用があります。


・ボトックス療法(注射)

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保険:〇原発性腋窩多汗症に保険適用
特徴:ボトックス®をワキの皮膚内に直接注射することにより発汗量を減少させることができます。ボトックス®は、ボツリヌス菌がつくるタンパク質から生成された薬です。交感神経から汗腺への情報伝達を遮断します。
効果は通常2~3日で表れ、4~9ヵ月にわたって持続します。効果の程度や持続期間には個人差があります。発汗抑制効果を維持するためには、4ヵ月以上の間隔で反復投与が必要です。


・ミラドライ(マイクロ波を照射)

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保険:適用外
特徴 FDA(アメリカの食品医薬品局)及び厚生労働省より2018年6月4日に原発性腋窩多汗症の薬事承認を取得しています。日本国内で厚生労働省の承認を取得しているワキガ・多汗症の治療器具はミラドライのみです。マイクロ波を使用することで、皮膚のダメージを抑え、エクリン腺とアポクリン腺を熱破壊します。

ミラドライわきが多汗症の医師団

・サーミドライ(熱)

保険:適用外
特徴:FDA(アメリカの食品医薬品局)に認可されている「サーミRF」という医療機器を使用してアポクリン腺、エクリン腺を破壊していきます。
先端に熱源がある極細の管(直径1mm)を皮下に挿入して、直接、汗腺に熱を加えて破壊します。サーモグラフィーを使用して皮膚の温度を確認しながら照射を行うため、傷跡や火傷を防ぎながら施術できます

・ビューホット(熱)

保険:適用外
特徴 ワキに多数の極細針を刺し熱を発生させることで、汗腺を破壊する治療です。
刺す針の深さによって高周波の照射出力を調整することができるので、個人差のあるアポクリン汗腺の深さに合わせて治療ができます。冷却板が取り付けられており、接地面の表皮層を急速に冷やすことで火傷を防ぎます。また、針の挿入時の痛みも緩和させることができます。

・水道水イオントフォレーシス

保険:適用外
特徴:電気を流す療法です。電気を流すとプラス極側で効果が表れます。手や足の多汗症では保険が適用されていますが、脇の場合は他にも様々な治療法があるため、優位性が低い治療法となっています。

【外科的治療(メスを使う治療法)】

外科的治療は、基本的には”汗腺を取り除く”という考え方で行われていますが、身体への負担や傷跡などを考慮した様々な手法が実施されています。また、同じ手術法でも、病院によって傷跡が残りにくい切り方を用いたり、病院独自の保証を提示している病院もあるようです。

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・剪除法(せんじょほう)

保険:腋臭症に保険適用
特徴:直視下摘除法や皮弁法(反転剪除法)とも呼ばれます。汗腺そのものを手術で取り除きます。身体に負担がかかるだけでなく手術の跡が残りますが、非常に高い効果が期待できると言われています。

局所麻酔でわきの下を無痛にし、ワキのしわに沿って2~5㎝程切開、皮膚を反転させ、臭いの原因であるアポクリン腺を”直接目で確認しながら”除去していきます。

メスを使うため、傷が癒えるまで安静にする必要があります。手術後の合併症については「日本美容外科学会会報 腋臭症術後合併症に関する後ろ向き診療録調査」で検索していただくと論文の要旨がご覧いただけると思います。ご参考ください。

・切除法(せつじょほう)

保険:腋臭症に保険適用
切除法はワキガ手術の中で最も歴史が古い手術方法です。ワキ毛が生えている部分の皮膚自体を取り除きます。アポクリン汗腺、エクリン汗腺、皮脂腺を確実に除去できる治療法ですが、皮膚全体を切り取ることにより傷跡が残ってしまう治療法ともいえます。

・皮下組織掻爬法

保険:適用外
ワキに小さな穴を開けて、スプーンのようなキューレットという器具を差し込みます。差し込んだキューレットによってアポクリン汗腺、エクリン腺、皮脂腺を取り除いていく治療法です。
皮下組織掻爬法はこれらを取り除くことによってワキガだけでなく多汗症にも効果が期待できます。

・吸引法

保険:適用外
特徴:ワキガの原因となるアポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺を吸引して取り除く治療法です。ワキに数mm程度の穴を開けて、”カニューレ”という針のような医療器具を差し込み、汗腺類を除去していきます。

●番外編~結局どれが一番効くの?~

また、治療に関して以下のようなメタ分析もありましたので、ご紹介したいと思います。ミラドライ等、入っていない手法やYAGレーザー等ご紹介していない手法もありますが、ご参考ください。

※メタ分析:統計的分析のなされた複数の研究を収集し、いろいろな角度からそれらを統合したり比較したりする分析研究法

・結局どれが一番効くの?
統計を用いて分析した中国の研究では、以下の順番で効果が期待できると報告されていました。
ほとんど優位性がないものは同列順位としています。

1.「吸引法と剪除法の組み合わせ」
2.「剪除法のみ」、「皮下組織掻爬法と剪定法の組み合わせ」
3.「切除法のみ」、「ボトックス注射」、「吸引法のみ」、「皮下組織掻爬法のみ」
4.「YAGレーザー(ヤグレーザー)」、「CO 2レーザー治療 」、「イオントフォレーシス」

統計を用いて分析した中国の研究によると、外科的治療は非外科治療よりも効果があり、非外科的治療の中ではボトックス注射は、一番優れているという内容が示唆されていました。

●まとめ

まとめ 文字素材

腋臭症や原発性腋窩多汗症の治療には、塗り薬から手術、保険が適用される方法からされない方法まで、様々な手法があることが分かりました。

また、手法だけでなく、料金や術後のケアもクリニックによって異なってきます。

治療を検討する際に考えるべき要素は多く、大変な事かと思いますが、ぜひ自分自身が納得できるベストな方法を見つけられればと願っております。

本稿がその一助になれましたら幸いです。

・参考文献
The Treatment of Axillary Odor: A Network Meta-Analysis


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