水道水イオントフォレーシス
●水道水イオントフォレーシスって何?
水道水イオントフォレーシスとは、手足では85%、脇では70%の多汗症患者に効果があると言われている多汗症の治療法です。
汗の多い手のひら、足のうらを水道水の入った容器の中に浸し、10~20mAの電流を1回20-30分の通電させます。8~12回行うとプラス極側の汗の量が減ってきます。可逆的な治療法のため、効果を維持するためにはその後も1週間に1~2回行う必要があります。
電流は、直流電流やパルス電流が使用されます。一般的に、手や足の治療には直流が適しており、ワキの下や皮膚が敏感な場合には、パルス電流が使用されます。
●水道水イオントフォレーシスの作用機構
実は、水道水イオントフォレーシスの正確な作用機構は未だ分かっていません。
多汗症患者の手のひらの汗腺を、水道水イオントフォレーシスをする前後に光学顕微鏡と電子顕微鏡で調べても治療後に構造の変化は認められなかったという報告があります。
また、構造には変化がありませんでしたが、健常者、多汗症患者共に、イオントフォレーシスをした後はナトリウムとカリウムイオン濃度が低下する変化が見られ、より複雑な仕組みで作用していることが示唆されています。
正確なメカニズムはわかっていませんが、多くの理論があり、水道水に含まれるイオンの一部が機能すると言われています。
作用機構は未解明のままですが、1930年代より、何十年にもわたる臨床経験と研究により、最小限の副作用で発汗が大幅に減少することが示されています。1984 年には、家庭用のイオントフォレーシス機器も導⼊されました.
●水道水イオントフォレーシスと子どもへの効果
英国皮膚科学会(BAD)ではイオントフォレーシスの年齢の下限は 5 歳で、ただし、12 歳未満の子どもの治療は、ケースバイケースで医師が決定する必要があるとされています。ほとんどの子どもは十分にイオントフォレーシスを受けることができるようです。
子どもを対象とした水道水イオントフォレーシスの研究は十分ではありませんが、平均年齢15歳(8歳〜17歳)の43人の患者(女性30人)(手掌や足底多汗症 39人(91%) 、腋窩多汗症19人 (44%)) を対象にした研究では、確認された副作用は、感覚異常(88%)、かゆみ(26%)、痛み(26%)、紅斑(14%)、乾燥(12%)、および 1 人の患者 (2%) における小胞形成および擦過傷が見られましたが、患者の 84% (36人)は満足する結果が得られたとのことでした。
まとめ
今回は、水道水イオントフォレーシスに焦点を当てて紹介いたしました。水道水イオントフォレーシスの作用機構は未だよくわかってませんが、何十年にも及ぶ研究で効果が示されてきました。人体って不思議ですね。
参考
掌蹠多汗症患者における交流式イオントフォレーシス前後の汗中ナトリウム,カリウムイオン濃度変化
Special Considerations for Children with Hyperhidrosis
Hill AC, Baker GF, Jansen GT. Mechanism of action of iontophoresis in the treatment of palmar hyperhidrosis. Cutis. 1981 Jul;28(1):69-70, 72. PMID: 7261675.
Tap water iontophoresis in the treatment of pediatric hyperhidrosis
Treatment of primary hyperhidrosis with tap water iontophoresis in paediatric patients: a retrospective analysis
BRITISH ASSOCIATION OF DERMATOLOGISYS Iontophoresis for hyperhidrosis